映画『悪女/AKUJO』主観視点が痛みの錯覚効果をもたらす摩訶不思議な作品
上映時間 | 124分 |
製作国 | 韓国 |
監督 | チョン・ビョンギル |
音楽 | クー・ジャワン |
配給 | ネクスト・エンターテインメント・ワールド |
公開日 | 2017年 |
主な出演者 | キム・オクビン(スクヒ) シン・ハギュン(ジュンサン) ソンジュン(ヒョンス) キム・ソヒョン(クォン幹部) |
「韓国映画ってどうなん?」
『悪女』やら『魔女』やら一体なんなの?と言いたくなるような。そんなに面白いの?と疑問を抱かせるようなタイトルに一切の魅力を感じず。と言いたいところですが、お門違いも甚だしい。そう言われてもおかしくないくらい勘違をしていた。
なんなら冒頭の覚醒したヒロインのアクションシーンだけでも観てほしい。いかにアクションシーンが優れているか。まー、この作品がすごいのはそれだけじゃないってところ。まったくもって侮れません。
あらすじ
犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親ジュンサン(シン・ハギュン)にいつしか恋心を抱き、結婚する。甘い新婚生活に胸躍らせていた矢先、ジュンサンは敵対組織に無残に殺害されてしまい、逆上したスクヒは復讐を実行。しかしその後、国家組織に拘束されてしまい、政府直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて新たに運命の男性に出会い幸せを誓うが、結婚式の日に新たなミッションが降りかかり――。
引用:Amazon.co.jp
感想
今までいろいろなアクションを観てきましたけど、これは規格外。アクション自体もそうなんですが、それよりもカメラアングルが超斬新。テレビゲームのような主観視点を取り入れていてほぼアトラクションに近い。
刃物が飛んでくれば避けてしまうし、銃で発泡されてしまっても避けてしまう。反射的に身体が動いてしまうので、動くなといっても動いてしまう。
だって避けないと殺られてしまう、そんな意識が容赦なく襲ってくる。いくら画面越しとはいえ、主観視点には身の危険を感じてしまう錯覚効果があり、無意識に自分の身体を心配してしまう。
「今の切られた?撃たれた?」とね。本当に恐ろしい感覚だった。
視聴しているだけなので実際は安全なんですけど、痛みへの共有が意識に働きかけてくるので、おっかない作品が世に出てきたもんだと評したい。
こんな初体験をしてしまったら、正直ほかのアクション映画は観れなくねーかいと思う。そのくらいのクオリティというか、勢いがあった。面白い面白くないの域はもはや達しているといっても過言ではない。
正直、韓国映画を舐めていた(大変失礼極まりない)自分としては、日本映画こそ韓国映画を見習うべきだとこの作品を観て思った。バイクアクションのシーンなんて一切CGを使っていないらしいので。
「どんなにカッコいいアクションであっても、CGに頼るぐらいなら撮らない方がいい」という監督の言葉には思わず唸ってしまった。単純にかっこいいでしょ、これ。
作品に対して、役者に対して、他の製作スタッフに対して、鑑賞者に対しても敬意の表れというか。こだわりを貫き通し、いい作品づくりを追求しようとする姿勢が汲み取れて二度観ようと思った。
アクションに魅せられるだけじゃなく、泣く。この作品を観たら泣いてしまう。母親の立場だったらなおさら。最愛の人に裏切られて、最愛の娘が殺されてしまうから。この辺はほんまもん。一切の遠慮がない。そして妥協もない。じゃんじゃん心がえぐられてしまうので、感情の起伏が激しく揺れ動く。
気づいたら走ってもないのに身体が疲れてしまっている。たぶん、気持ちの問題。精神的にはよくない物語になっているので、娘さんがご家庭にいる方は特に気をつけて観たほうがいい。と、言っても、観る人は観るでしょうけど。
『梨泰院クラス』とは違って父親の立場として共感できる場面は一切なく、それでも娘がいるとその姿を重ねてしまう。
父親であろうが母親であろうが結局のところは関係ない。万が一同じような立場になったらと嫌でも想像力が働いてしまう。それがものすごく嫌で現実逃避に走る。最悪な事態と向き合うのって怖いんだなと思った。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
ヒョンス役のソンジュンを選びました。理由は、大切な存在を守ろうとするその心情の移り変わりにグッとくるものがあったからです。
好きになるなと言っても好きになってしまう。これは男性の性でしょうか。はじめは任務といった形でお近づきになり、同じ時間を過ごしていくなかで異性に対しての感情が芽生え、そして恋に落ちてしまう。この一連の描写のなんと素敵なことか。しびれました。
しかも命をかけてまでも大切なものを守ろとしますから、心が動かないわけがありません。その姿はほんまもんです。かっこいいです。
[box class=”glay_box”]名前:ソンジュン(성준)
生年月日:1990年7月10日 (年齢 30歳)
出身地:韓国
身長:187cm
体重:65kg
血液型:B型
Instagram:@ thuggyduck
[/box]主な出演作
映画 | 顔と心と愛の関係(2009年) |
私は公務員だ(2012年) | |
冥王星(2012年) | |
怖い話2(2013年) | |
悪女/AKUJO(2017年) | |
ドラマ | 個人の趣向(2010年) |
ホワイトクリスマス(2011年) | |
私に嘘をついてみて(2011年) | |
美男<イケメン>バンド~キミに届けるピュアビート(2012年) | |
湿地生態報告書(2012年) | |
わたしたち結婚できるかな?(2012年-2013年) | |
九家の書~千年に一度の恋~(2013年) | |
抱きしめたい~ロマンスが必要~(2014年) | |
恋愛の発見(2014年) | |
ジキルとハイドに恋した私(2015年) | |
上流社会(2015年) | |
カフェ・アントワーヌの秘密(2016年) | |
完璧な妻(2017年) |
最も美しいで賞
スクヒ役のキム・オクビンを選びました。理由は殺し屋でありながらとびっきりの愛が詰まっていたキャラクターだったからです。
彼女はけして化け物なんかじゃなく、報われない立場、報われない人生にもがきながら生きていくことを選び、復讐を果たします。そのなかで彼女の心情が移り変わる描写は、時に切なく時に平穏で愛おしくも感じました。
最愛の人や娘が殺されてしまったらと考えると、誰だって悪女になってしまうもんです。その姿に醜さは一切感じられず、むしろ腹の底からぐつぐつと煮えたぎる憎しみに美学すら感じました。
[box class=”glay_box”]名前:キム・オクビン(김옥빈)
生年月日:1986年12月29日 (年齢 34歳)
出身地:韓国
身長:167cm
体重:48kg
血液型:A型
Instagram:@kimokvin
[/box]主な出演作
映画 | ヴォイス (2005年) |
阿娘 (2006年) | |
多細胞少女 (2006年) | |
渇き (2009年) | |
女俳優たち (2009年) | |
高地戦 (2011年) | |
タイム・クライム(2013年) | |
国選弁護人 ユン・ジンウォン(2015年) | |
悪女/AKUJO(2017年) | |
一級機密(2017年) | |
ドラマ | ハノイの花嫁(2005年) |
おはよう、神様(2006年) | |
オーバー・ザ・レインボー(2006年) | |
銭の戦争 ポーナスラウンド(2007年) | |
剣と花(2013年) | |
パンドラ 小さな神の子供たち(2018年) |
さいごに
そんなわけで、予告編を観るぐらいなら今すぐにでも本編を再生するべきことを悟ってしまった。未見の方はどうぞ。なんなら、7分と言わずに全編観たほうが幸せになれるってもんです。
ここ最近は強い女性ヒロインが登場する作品ばかりを観ているような気がします。『ANNA/アナ』もそうですし。今ハマっている『スタートアップ: 夢の扉』だって、登場する女性たちは強い人ばかり。華があるから眺めるだけでも十分楽しめます。