映画『望み』希望か、絶望か。真実が明らかになったときに涙する作品
上映時間 | 108分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 堤幸彦 |
音楽 | 山内達哉 |
主題歌 | 「落日」森山直太朗 |
配給 | KADOKAWA |
公開日 | 2020年 |
主な出演者 | 堤真一(石川一登) 石田ゆり子(石川貴代美) 岡田健史(石川規士) 清原果耶(石川雅) 加藤雅也(寺沼俊嗣) 市毛良枝(織田扶美子) 松田翔太(内藤重彦) 竜雷太(高山毅) |
あかん、これはゾッとする内容やった。
観なきゃよかったとさえ思った。
なぜなら、けして他人事とは思えなかったから。
あらすじ
一級建築士の石川一登(いしかわかずと)とフリー校正者の妻・貴代美(きよみ)は、一登がデザインを手掛けた邸宅で、高校生の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)と共に幸せに暮らしていた。規士は怪我でサッカー部を辞めて以来遊び仲間が増え、無断外泊が多くなっていた。受験を控えた雅は、志望校合格を目指し、毎日塾通いに励んでいた。冬休みのある晩、規士は家を出たきり帰らず、連絡すら途絶えてしまう。翌日、一登と貴代美が警察に通報すべきか心配していると、同級生が殺害されたというニュースが流れる。警察の調べによると、規士が事件へ関与している可能性が高いという。行方不明者は三人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は二人。息子は犯人なのか、それとももう一人の被害者なのか。
引用:Filmarks
感想
いやね、事件を経験しているとかの話じゃなくて、石川家と通ずるものがあってね。まず、家族構成がおんなじ。長男長女、我が家とおんなじ。その時点で、勝手に将来を危ぶんでしまった。違うのは、お互いの年齢とか、持っている車とか、家とか、ライフスタイル全般がまったくの異次元。しかも、たぶん、年収も違う。だいぶ違うと思う。職種や身分がそもそも違う。
じゃー、結局おんなじなのは、家族構成が似ているってだけで、ほかはほとんど似ていない。でも、家族構成が似ているというのは、かなり危ない。脳内で想像力が無限大に膨らんでしまうから。もしかして、こうなる可能性もあるんじゃなかろうかと、子どもたちのことが途端に心配になってしまう。そして、反省に至る。
普段から、ちゃんと、子どもたちのことを見ているかなとか、言葉かけひとつとっても、威圧的に関わっていないかなとか。まず、間違いなく自分自身の行動を見つめ直す作業がはじまる。
思春期になった息子から反抗的な態度を取られたら嫌だなー、て思う。しかも、何を考えているのかわからない、てのが一番厄介で、というか勘弁してほしい。そうなってくると、反町隆史並に「言いたいことも言えないこんな世の中は、POISON」って言ってしまいそうで、たぶんそんとき、100%の確率で息子に嫌われてしまうのは確実。いや、家族全員に嫌われる、そっちのほうが確率は高い。
だけど、「何もしなければ未来は変えられない」なんて、そんな説教じみた言葉は僕には言えない。言いたくもない。こっ恥ずかしいにもほどがある。喉仏らへんがむず痒くなる。聞くほうも耳元がむず痒くなるはず。
けど、違った。石川家は違った。リハビリテーションの教材に挟まれていた一枚の紙に書かれていたのは、「言いたいことも言えないこんな世の中は、POISON」……じゃなくて、「何もしなければ未来は変えられない」という父から聞いた言葉だった。
その瞬間、父である一登は泣いた。そして、僕も泣いた。心に押し寄せてくる熱いものがくるのがわかった。ジーンとした。どんなにくっさいセリフであろうと、やっぱり言うべきだと思った。
雅は石川家のなかでもめちゃめちゃいい子だった。つか、共感ポイントが多くあった。建築家の父・一登の仕事にえらく協力的で、「自宅を見学してきたお客さんに対して適当に愛想を振りまいとけばいいんだよ!」というセリフには吹いた。直球ストレートに的を得ていたから、吹いてしまった。
兄・規士が行方不明のときも、母・貴代美に対して「どうしてお母さんはお兄ちゃんの心配ばかりするの?」と感情をあらわにしていたけど、その感情を抱くのは100%間違いないと思った。生きるって、辛い。雅の立場からすると、あまりにも悲劇。一生心に傷を負ってしまうほどの経験をしているので、まともに受験勉強なんて手に付かないはず。
けど、雅は違った。エンディングのシーンで希望校らしき制服を着ていたので、想像するに、雅は並大抵の精神力と気力の持ち主ではないと思った。ほんま、すげーよ。
「つか、規士はどこでなにしてんだ?」殺人事件の加害者なのか、そうじゃないのか。にしても、どうして姿を現さないのか。
メディアの勝手な解釈によって飛び火が石川家に降り注ぐなか、「規士は殺人なんてやっていない」と信じる父・一登に対し、「規士が加害者であっても生きて帰ってくればそれでいい」と願う母・貴代美。2人の間で考え方や思いも異なっている点は、人間の心理を上手く表現されていて、すこぶる面白かった。
どっちの気持ちもわかって、辛かった。1番は生きて帰ってきてほしい、ただその1点だけで。死んじゃったらなにもできないし、抱きしめることさえできない。そう思っての、映画タイトルの「望み」ってのは、こういうことだったんだと、腑に落ちた。家族の在り方を改めて考えさせられる内容でしたし、泣ける。ぜひ一度、ご鑑賞あれ。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
石川規士役の岡田健史を選んだ。理由は、見た目が9割。あと1割は演技。俳優としての経験値はどうあれ、神妙な空気感が彼の演技を通して伝わってくるものがあった。
「おい、おい、結局お前はどっちなんだよ!」やったのか、それともやってないのか。クライマックスを迎えるまで規士の人物像がわからなかった。演出や脚本もそうだけど、完全に魅せられた。21歳にして、この演技力には脱帽。これから期待でしかない。
[box class=”glay_box”]名前:岡田健史(おかだ けんし)
生年月日:1999年5月12日 (年齢 21歳)
出身地:日本(福岡県)
身長:180 cm
血液型:O 型
[/box]おすすめ作品3選
■ 映画
予告編の魅せ方が、『ワン・デイ 23年のラブストーリー』みたいな作品。内容自体も似ている箇所がたくさんあるので、その辺にイラッとこない方にはおすすめ。
- 新解釈・三國志(2020年)
映画のタイトル通り、三國志を新しく解釈したらこうなったというギャグ作品。三國志をこよなく愛している方にとっては笑えないかもしれません。
- そして、バトンは渡された(2021年)
第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこ氏の同名小説を映画化した作品。血の繋がっていない親子が繰り広げる、けしてほっこりはしないであろう物語。
■ ドラマ
教師と生徒との禁断の純愛物語を描いた作品。教師役が有村架純というだけで、テンション爆上がり。
これさえ観とけば、福岡のことが大体はわかるはず。たんぶんだけれども。博多弁が可愛いというよりかは、福田愛依が可愛い。
綾野剛と星野源のダブル主演が送り出す、日本の社会問題を取り扱った刑事ドラマ作品。なんといっても、出演者の顔ぶれが豪華すぎる。何人出演していたかわからないほど、盛りだくさん。
最も美しいで賞
石川雅役の清原果耶を選んだ。理由は、見た目が9割。あと1割は演技。かっこいいで賞を選んだ理由とまるっきし同じ。
普通に可愛い。このご時世、珍しい種族の、THE・清純派の女優さん。同じジャンルで言うなら、顔の角度によっては芦田愛菜に似ている。普通に間違えるレベル。しかも演技力は本物で、19歳とは思えない迫真の演技力には脱帽をするしかない。
[box class=”glay_box”]名前:清原果耶(きよはら かや)
生年月日:2002年1月30日(19歳)
出身地:日本(大阪府)
身長:162 cm
血液型:B 型
[/box]おすすめ作品3選
■ 映画
かの胸毛男爵・山田孝之がプロデュースした、「人間の善と悪」をテーマに、父の自殺を機に帰郷して父の裏の顔を知った主人公が、人間の二面性に振り回されつつやがて自らも裏稼業に堕ちて行く姿を描いた、超ダークな作品。
- まともじゃないのは君も一緒(2021年)
数学一筋の予備校講師と女子予備校生が、普通じゃない会話劇を繰り広げる面白おかしい作品。普通とはなんぞや?、2人の間で繰り広げられる議論が最高におもろくてハマる人続出中。
- 護られなかった者たちへ(2021年)
ベストセラー作家・中山七里の同名ミステリー小説を映画化した作品。東日本大震災から9年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件を描く。
■ ドラマ
関西の2 人の男子高校生、瀬戸と内海が放課後に河原でまったりと喋る……。いや、ただ駄弁る(だべる)だけのドラマ。軽快な会話劇は中毒性あり。
産婦人科の話。生まれてくる命の重さや大切さについて、実体験を基に描かれている。妊娠中絶やDV、性虐待といったデリケートな部分も描いた、リアルな作品。
亡き父のために、奉公先の幼子をを守りつつ仇討ちのために奮闘する様を描いた作品。
さいごに
自分だったらどんな気持ちを抱き、どう思うか、そんなことを考えながら鑑賞してみた。けして軽い内容ではなかったので、頭と心にずいぶんと重みがずっしり伸し掛かるものがありましたけど、観なきゃよかったとは本音では思ってはいない。
むしろ、家族の問題に対してきちんと向き合うきっかけを与えてくれた、いい作品だと思う。演出自体も、終始、緊迫感漂う展開の連続だったので、あっという間の108分間に感じた。まず、観て損はしない。
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