映画『孤狼の血 LEVEL2』役所広司亡きあとに、ぽっかり穴が空いてしまったかのような作品
上映時間 | 139分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 白石和彌 |
音楽 | 安川午朗 |
配給 | 東映 |
公開日 | 2021年 |
主な出演者 | 松坂桃李(日岡秀一) 鈴木亮平(上林成浩) 村上虹郎(近田幸太) 西野七瀬(近田真緒) |
第45回日本アカデミー賞ノミネート作品というわけで、観てもうた。しかも、噂によると前作のほうが面白いってことで、そっちも観てもうた。
結果……。
うん、確かに、役所広司がいるといないでは、全然違う。ほんと、全然違う。緊迫感とか、迫力とか、深みがないことはないけれども、薄い。率直な感想はそんなとこ。
では、今からは作品の感想について、前作と比較したなかで松坂桃李演じる日岡秀一という人物に焦点を当てた内容で、僕自身が感じたことをずばずばと書いていきたいと思う。
あらすじ
柚月裕子によるハードボイルド小説『孤狼の血』シリーズを基に、原作では描かれなかったエピソードを映画化。ひとりの“悪”の登場と一件の猟奇殺人事件の発生により、街の秩序が崩れ、ピンチに陥る一匹狼の刑事の姿を描く。監督は前作に引き続き白石和彌が務め、主演を松坂桃李が演じるほか、鈴木亮平、吉田鋼太郎、中村獅童ら豪華俳優陣が揃う。
引用元:Google
感想
うん、じゃー、いくよ。
松坂桃李はすごい実力のある俳優なのは間違いない。そう感じたのは、『娼年』という作品。この作品で演じたのは、バーテンダーでバイトをする大学生が娼夫の仕事に転職したのをきっかけに、女性の本当の快楽を見出していくといった役どころ。
どう考えたって過酷な役だったのは容易に想像ができる。見事に演じ、一切の不自然さを感じさせない表現力の高さに、今までとは違ったイメージを抱いた。
けど、本作に関しては、まだ成熟されていないように感じた。あと少し、渋みがほしい。役所広司と比較されてしまうと、今の日本人俳優には誰ひとりとして勝てる人はいないと思う。
まー、でも、役柄が異なっているので比較すること自体間違ってはいるのですが、どうしても役所広司の大上の存在はでかかった。2を観たあとで1を観てしまったので、なおさらそう感じてしまう。日岡の上司である大山の人間性が1で丁寧に描かれていた点も影響力が大きかったのもある。
ちなみに、このときの松坂桃李の日岡はよかった。ぴったりな役柄だった。
だけど今回は大山の意思を受け継いだ日岡として、どこか無理して悪ぶっているような気がしてならなかった。一皮剥けていないのもあって、物足りなさにつながってしまった。登場人物の背景として薄っぺらさは否めなかった。
その日岡への過度な期待が評価を下げてしまったといっても過言ではない。無理もない、本作は1からの3年後を描いているので、残念ながら3年で人はそうは劇的に変わらない。
確かに1の日岡のことを考えれば、短髪姿やタバコを吸う姿が様になってて、形相もやや引き締まった感じだってことぐらいはわかる。真面目キャラだった日岡の雰囲気とは違う。その違いといっても同級生と久々出会って驚く程度のもので、僕が求めていたのはもっと上。
大山の背中を間近で見てきて必死に追いつこうとしている段階(大山の役割を担おうとしている段階)で、日岡という人物では完全に役割不足が浮き彫りになっていた。大山に似せようとするんじゃなくて、日岡という独自の登場人物として成熟していったほうがもっと魅力が増していたのではないかと思う。役柄の設定上しかたないのかもしれませんが。
1→2の正当な手順で観ていれば、日岡に対して抱くイメージも違ったものになっていたのかもしれない。日岡という登場人物は、とことん大山の役割を果たそうと必死だったのもわかる。
前もって言うと、本作のシリーズはただの抗争がどうのこうの楽しむだけのヤクザ映画ではないことは知ってほしい。警察内部でひしめく汚職問題が重要なテーマになっているということ。現に本作でも、殺人事件の証拠があるのにも関わらず警察内部で揉み消されていることが発覚する。
中村梅雀が演じた瀬島という登場人物はまぢで怖い。滝藤賢一が演じた嵯峨は、前作から登場する人物で、あいかわらずのゲス刑事でしたけど。この刑事2人による行動は汚職の極みであり、最大にして最低の裏切り行為には、警察の恥というべき姿が露呈されていた。
国家権力を我がものにしようと汚職を働く刑事こそが真の悪であり、あくまでヤクザはその駒にすぎない存在であるということ。そういった視点に早くから気づいて観ていればと、今さながら後悔をしている。
堅気の安全を守っていた大山の意思が日岡へと渡っていたのはよかったものの、ヤクザの抗争を目論む上林(鈴木亮平)の存在が目立っていたので、いまいち感じとれにくいものになっていたので仕方がない。
脳裏に焼き付いて離れない愚行をやってくれていたので、もはやヤクザというよりかはサイコパスに近かった。仮にも、鈴木亮平の演技は第45回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞に選ばれたわけですし。
シーソーと同じで、誰かが強烈な存在感を放てば誰かが埋もれてしまう。今回はその原理に見事に当てはまっていたのかなと感じた。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
上林成浩役の鈴木亮平を選んだ。選んだ理由は、表面的なものではなく内面の恐怖とやらが滲み出ていたから。
作中でやっていることは、けしてかっこいい行いではありませんが、観る者に恐怖の感情を与えるほどの表現力を考えると、セリフを発するときの感情ののせ方や目の力が素晴らしいと感じた。
画面越しにひしひしと伝わるものがあった。完全にイカれている風にしか見えなかった。もはや恐怖でしかない。作中に上林の過去にも触れられた描写があるので、そちらにも注目して観ていただきたい。
どうやったらこんな化け物が誕生するのか、その原点となる家庭環境の脆さはいつの時代も社会問題として解決されないままなので、深く考えさせられた。
[box class=”glay_box”]名前:鈴木亮平(すずき りょうへい)
生年月日:1983年3月29日(38歳)
出身地:日本
身長: 186 cm
Twitter:@ryoheiheisuzuki
Facebook:Ryohei Suzuki 鈴木亮平
公式サイト:鈴木亮平オフィシャルサイト
[/box]おすすめ作品3選
[aside type=”boader”]週刊少年ジャンプに連載された伝説の人気コミック『究極!!変態仮面』の実写映画。女性のパンティを被ると超人・変態仮面に変身する主人公を熱演。
薩長同盟や明治維新立役者の一人でもある西郷隆盛の半生を描いた作品。西郷隆盛の人物に近づけるために、体重を増やし体型を変えて挑んだ意欲作となる。
「殺人犯の息子」として育ってきた主人公が、父の無実を信じて事件を調査する、“泣けるミステリー”作品。父親役を熱演。
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最も美しいで賞
近田真緒役の西野七瀬を選んだ。選んだ理由は、こんなスナックのママがいるお店があれば一目散に足を運びたいと思ったから。
きれいというよりかは、可愛いさのほうが上にはなりますけど。演技も思いのほか悪くなかったので、ほかの作品にも興味をもった。こちらは、第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞している。
乃木坂46に所属していたこともあってアイドルのイメージが強いですが、今回の受賞をきっかけに女優として大きく飛躍するのを期待したい。
[box class=”glay_box”]名前:西野七瀬(にしの ななせ)
生年月日:1994年5月25日(27歳)
出身地:日本
身長:159cm
Twitter:@nanaseandstaff
Instagram:@nishino.nanase.official
公式サイト:西野七瀬オフィシャルサイト
[/box]おすすめ作品3選
[aside type=”boader”]週刊少年ジャンプに連載され、累計発行部数1400万部にもなった桂 正和のSF恋愛漫画「電影少女」の実写ドラマ。ビデオガール・アイ役のマイルドなエロさがたまらない作品となっている。
新婚夫婦が“交換殺人ゲーム”に巻き込まれていく姿を描いたミステリードラマ。ヒロイン役を熱演。
病院薬剤師にスポットを当てた医療ドラマ。薬剤師の視点で、患者と向き合う姿が描かれている。西野七瀬の関西弁が可愛いところにも注目。
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さいごに
今回、純粋に本作だけを評価した感想ではなく、前作と比較するなかで感じたことを書いてみた。
日岡が大山に影響されすぎているせいで、本来のよさが中和するどころか脱皮しきれていない状態だった。魅力自体がさほど伝わってこなかったのはちょっと残念。あと、ヤクザ映画ってよりも、上林のサイコパス映画みたいな印象が強く残ってしまった。過激な描写が苦手な方は注意が必要なので、そういった層にはあまりおすすめしない。
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