映画『竜とそばかすの姫』勇気ある行動ひとつで人生は変えられることが学べる作品
上映時間 | 121分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 細田守 |
音楽 | 岩崎太整(音楽監督) Ludvig Forssell 坂東祐大 |
主題歌 | millennium parade × Belle(中村佳穂) 「U」 |
配給 | 東宝 |
公開日 | 2021年 |
主な出演者 | 中村佳穂(内藤鈴/ベル) 成田凌(久武忍) 染谷将太(千頭慎次郎) 玉城ティナ(渡辺瑠果) 幾田りら(別役弘香) 森川智之(ジャスティン) |
震えた。ベル(内藤鈴=以下、鈴と表記)の歌声に。
だけど、物語は121分じゃ、時間が足りなかったじゃない?と思うほど、テンポの速さが気になった。高知から東京まで、電車にバスにゆらゆら揺られて、着くの早くない。しかも、高校生ひとりで。どんだけ度胸があんだよ。
まー、そんな細かいことが気になりながらも、鈴の成長への伸び代がハンパねーことに気づく。
そして、全体として見慣れた感はあるものの、新鮮さを犠牲にして学べることがたくさんあった。今からはその学びについての感想を書いてく。
あらすじ
歌が好きな女子高生・鈴は、幼い頃に母親を亡くして以来、人前では歌うことができなくなっていた。ある日、彼女は全世界から人が集まる仮想世界「U」に足を踏み入れる。やがて、Uの世界で「ベル」という歌姫として人気者になる鈴だったが、突然現れた謎の存在「竜」が、彼女とUを撹乱していく。
引用元:Google
感想
この手の内容は見慣れた感がある。それもそのはず、『サマーウォーズ』のインターネット上の仮想世界OZ(オズ)と〈U〉の世界観は被るものだったからだ。
アバターがいて、仮想世界の秩序を乱す者がいて。サマーウォーズではラブマシーンがそれに値する人物で、本作では竜になる。
だけど、ちょっと違うのが、ラブマシーンは人工知能であって、竜には操作する人間がいる。これにより、物語の内容もちょっと変わってくる。ラブマシーンが絶対的な悪とするなら、竜はそうではない。
竜はその人の状態がそのまま反映する〈As〉(アバター)といったものに位置付けられており、いわゆるもうひとりの自分になる。わかりやすくいうと分身。つまり物語の趣旨は違ったものにはなってくる。
主人公の描き方にも違いがあって、サマーウォーズでは主人公・小磯健二がラブマシーンを倒していく過程で成長していく様を描いているのに対して、本作では鈴が〈U〉の世界や竜(恵)との出会いを通して成長していく様を描いている。
現実世界では歌えなかった歌も、仮想世界ではベルという存在になることで自然と歌えるようになる。それにより、鈴の表情や声のトーンにも明るい変化が見られる。ここで思うのは、人はちゃんとしたきっかけさえあれば変われるということ。(=救われるということ)
しかもそれは些細なことからはじまるもので、仮にどん底の世界に落ちたとしても周りの人から助けてもらえる。だからこそ、常日頃から周りに優しく、感謝の気持ちをもって生きることの大切さを鈴というキャラクターが象徴するものになっていた。
幼い頃、母を失った悲しみから絶望を抱え生きてきた鈴は、どうして命を落としてでも赤の他人を助けたのか理解に苦しんでいた。そんな中、仮想世界〈U〉の世界を知り、竜との出会いを通して母の行動の意味に気づいていく変化は、子どもから大人になっていく理由がわかるものとなっている。
健二や鈴というキャラクターは、一貫して周りの人を引きつける力をもっていることに気がつく。なぜ、そうなのかというと、僕が感じたのは一生懸命さと覚悟が影響しているのではないかと思った。
覚悟を形であらわすのは大変なことだと思う。言葉ではいくらでも言えるからだ。竜のアバターをもつ恵は、優しく言葉をかけてくる人たちに対して過度な不信感を抱いている。その理由は、今まで言葉だけで実際は行動として他者からの介入を受けたことがない。父親からのDVがそれに値する。
来る日も来る日も父親から暴力を受け、身体的にだけでなく精神的にも傷を負ってしまう。それを形にしたのが、竜がまとうマントにあらわれる模様になっている。
恵にとって、仮想世界でしか会わなかったベルという存在は、時に居心地良さを感じる相手であった。相手が誰かわからないゆえに、信頼・信用してしまいたくなる気持ちはわかる。誰にもすがる相手がいない状態だと尚更その気持ちは強くなる。
恵という存在は、現実社会を生きる若者を色濃く反映しているキャラクターだと思う。本当は誰かの助けを必要としているけれど、不器用な性格(今まで人から優しくされた経験がない)ゆえに相手との付き合い方がわからず、思いとは反対側へと遠のいてしまう。
そこにたったひとつの光(=道)として現れたベル。そんなベルをはじめは突き放そうと威嚇するも、自身に付きまとい言葉を重ねていくなかで徐々に心を開くようになる。
だけどそれは本当の意味での一生懸命さや覚悟とは違い、急にアバター以外でベルと名乗る人が目の前に現れたとしても、信頼・信用ができないのは至極真っ当な話。このとき、中途半端に優しい言葉をかける鈴に対して恵は激怒する。
どうしていいのかわからない状態のとき、鈴の幼馴染である久武忍からもうこれしかないことを告げられる。それこそが本当の覚悟であり、その覚悟をもって一生懸命歌う姿に恵の心境や周りの人たちも批判から応援するといった行動の変化が見られる。
サマーウォーズの健二も、はじめから応援される側ではなく、覚悟をもって決断をし一生懸命行動する姿に周りも心が動かされていく様が描かれている。
全員が全員、健二や鈴のような人にはなれないかもしれませんが、行動一つで人生はいくらでも変えることができる。そんな観る人全員に対してエールが込められた素晴らしい作品である。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
物語の最後の最後でキラーパスを出した幼馴染である久武忍を選びたいところでしたが、ここは鈴の親友の別役弘香を選んだ。鈴を〈U〉の世界へ誘った張本人でもある。声優は幾田りら(YOASOBIのボーカルの人)が務めている。
選んだ理由は、キャラクターのインパクトが強く、パソコンのモニターや巨大な本体などハードウェアを担ぎ、パソコンを駆使して竜の捜索を行う姿がかっこよかったから。
鈴のサポートをするどころか大胆にもマルチに活躍をしていたので、隠れた主人公だと思う。お化粧した姿も何気に美人でしたし。こういうキャラクターは、僕のなかでいつでも映えてしかたない。鈴を陰ながらではなく、表立って全力で支えている姿が本当にいかしてた。
[box class=”glay_box”] 名前:幾田りら生年月日:2000年9月25日 (年齢 21歳)
出身地:日本
身長: 154 cm
Twitter:@ikutalilas
Instagram:@lilasikuta
[/box] おすすめ曲3選
[aside type=”boader”]繋がりがテーマとなっている曲。原作の小説「RGB」は、些細なことがきっかけで疎遠になってしまった、3人の幼馴染が大人になって再会を果たすまでを描いた素敵な物語。
歌詞の一つひとつの文章がいちいち心に刺さって痛くなる。特に、失恋した人にはグサグサ刺さる。歌詞は小説「それでも、ハッピーエンド」が原作となっている。
Youtube再生回数が1億越えというビッグモンスター曲。アップテンポでリズミカルなメロディがよく、一度聴くとサビにかけての心地よいメロディが頭に残ってしまう。リピート必須で、中毒性が高い。歌詞は短編小説「タナトスの誘惑」が原作となっている。
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最も美しいで賞
内藤鈴を選んだ。声優は中村佳穂が務めている。〈U〉の世界でベルになって歌う姿は、まさに美しさを体系化していた。映像がむちゃくちゃ美しいのもあって、それに美声が拍車をかけていた。
軽くツッコを入れたくなるような物語はおいといて、鈴の歌声はまぢで感動してしまう。いやでも鳥肌を立たせにくる。
心のきれいな部分が歌声に反映しているかのようで、居心地のよいメロディーが頭に残って癒された。ほんまに素敵すぎる。
[box class=”glay_box”]名前:中村佳穂
生年月日:1992年5月26日 (年齢 29歳)
出身地:日本
Twitter:@KIKI526
Instagram:@kahonakamurainfo
[/box]おすすめ曲3選
[aside type=”boader”]アルバム「AINOU」の1曲目のナンバー。日本語読みで「有名税」。
アルバム「AINOU」の3曲目のナンバー。楽曲の中で一番人気のある曲。キャッチーな歌詞とメロディーに仕上がっている。
アルバム「AINOU」の11曲目のナンバー。この曲を聴いて感動しない人はいない、それくらいすごい曲。
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さいごに
『サマーウォーズ』に似てつまらないとはじめは思っていましたが、そうじゃない。似ているからつまらないといったひと言で終わらせるには、あまりにももったいないと感じる。
物語に登場するキャラクター一人ひとりの視点で観ることで、新しい発見につながり楽しめるものとなっている。一見すると映像美と歌声に目や耳がいきそうではありますが。そこも素晴らしいのは確かにある。
けど、そのさらに素晴らしいと思うところは、出来事をきっかけに鈴や彼女を取り巻く周りの人たちが成長していく姿に感動がある。
勇気ある行動こそが、人を変え、世界を変え、人生を変えていく。とんだ素晴らしい作品に出会えたことに感謝しかない。
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