映画『ドライブ・マイ・カー』西島秀俊が演じた役の視点で観るといろいろなことに気づかされる作品
上映時間 | 179分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 濱口竜介 |
音楽 | 石橋英子 |
配給 | ビターズ・エンド |
公開日 | 2021年 |
主な出演者 | 西島秀俊(家福悠介) 三浦透子(渡利みさき) 霧島れいか(家福音) 岡田将生(高槻耕史) |
うーん、本当の意味で理解するには、もうちょっと時間が必要なのかな。
僕の目に映ったものというのは、数々の賞に受賞されたよさがわからなかった。この手の作品は大抵そうなる。
だからこそ辛かったりする。作品のすごみが理解できないほど、人生経験がないってことはないのだけれども。
くそー。凡庸な脳みそを呪ってやりたいぐらいある。
あらすじ
舞台俳優で演出家の男は、妻と穏やかに暮らしていた。そんなある日、思いつめた様子の妻がくも膜下出血で倒れ、帰らぬ人となる。2年後、演劇祭に参加するため広島に向かっていた彼は、寡黙な専属ドライバーの女と出会い、これまで目を向けることのなかったことに気づかされていく。
引用元:Google
感想
西島秀俊が演じた家福悠介の視点で観るといろいろと感情が揺すぶられた。なかでも妻である家福音が、ほかの男とやっているシーンは強く頭に残った。エロいとか、そんな類の話じゃなくて。複雑な気持ちになる。
悠介はその場を目の当たりにしているのにも関わらず、自らその場を立ち去った。どうしてその場で責め立てることなく立ち去ってしまったのか。それは妻を心から愛しており失いたくない気持ちがそうさせのだという。
でもそれはちょっと違うような気がしてならない。それだと自分自身が傷つきたくない、自分の考えや思いを優先して守りたい。つまり自己中心的な考えであって、それって本当に妻を心から愛しているのか甚だ疑問が浮かぶ。
違うよね。自分自身から妻から逃げてただけだよね。そんな中途半端な気持ちが妻を殺してしまった。
後ろめたさ全開で生きていかなければいけない。けれど、そんな人生であっても他人のために働いて、役に立って、苦労して、それでも生きていかなければいけない。そうやって歳をとって死んだ後で、やっと腰を据えて安らげる時間が訪れる。
三浦透子が演じた渡利みさきとの出会いを通して、悠介は学んでいく。その過程がすごく自然で、お互いの優しさが感じ取れるシーンがいくつもあって、この不思議な関係性に心が落ち着いた。
そんなみさきも、誰にも話せないような過去を抱えている人物のひとりである。その過去は、悠介のドライバーを務める過程で彼にだけ明かされていく。
そして、この2人にはある共通点があることに気がつく。それは辛く、長く、自己嫌悪の渦に抜け出せずにいるってこと。そんな2人が巡り合ったのも印象深かった。
岡田将生が演じた高槻耕史は、悠介にとっては憎き相手であったことは容易に想像がつく。それは妻の不倫相手であったからだ。
それなのにプロの演出家としての意識なのか、演劇祭に高槻を採用し、仕事仲間として付き合うようになる。目の間に妻を抱いた相手がいるのにも関わらず、完璧に感情を押し殺す。しかもこれが最低限の関わりに留まるだけでなく、高槻に何度か飲みに誘われる。
「どこぞのクソガキが!」
表情には一切出ていなかったけど、そんな感情ひとつやふたつ持っていたことでしょう。だけど、なぜか、高槻が作中で放つ言葉には悠介にとって核心をつくようなものがあった。それも悠介が知らないもうひとつの妻の顔を見ている気概すらあった。
感情優先で生きてきた人間と、そうじゃない人間。
ひとりは反復を好み、そこから真意を見出そうとする。もうひとりは反復を嫌い、豊かな感情から真意を見出そうとする。そう思うと、この2人は表裏一体の存在であることが見えてくる。
悠介が知ってて、高槻が知らないこと。一方で高槻が知ってて、悠介が知らないこと。
妻の音が求めていたのは、そのどちらでもあり、彼女を形成するのに必要不可欠な存在だった。彼女自身も葛藤と欲望の狭間で生きてきた人間で、亡くなる前にそのことを悠介に伝えたかったのだろうと感じた。
数々の不倫を犯し、けして許されることではありませんが、そんな妻を認め、傷つき、責め立てて、ぶつかり合って、ひとつの問題を解決していく過程で、感情もぐちゃぐちゃになりながらも、辛い人生を歩んでいく覚悟。
そんな覚悟の足りなさを悔やみながらも、自分自身ときちんと向き合うことの重要性や必要性を悠介から学べたような気がした。
生きるって、辛い。けど、それでも生きていかなければいけない。そんなメッセージが強く心に突き刺さる作品だった。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
ここはもちろん、最優秀主演男優賞を受賞した家福悠介役の西島秀俊を選んだ。
もうね、この男といったらかっこいいのなんの。50歳には到底見えん。もう少し若く見える。だけど渋みがいい感じに出てきて、いい感じに歳をとっている。
見た目以外のことでは、今回のラストシーンで涙するシーンは泣けた。かなり泣けた。
もうあの世にいってしまった妻と、もっと話したい、後悔していること全部話したい気持ちに気づいて、その気持ちをどこにぶつけていいのかわからない感情に襲われて。目の前に広がっているのは、混沌した世界しかない。むしろ、それしか見えへん。
辛く、深く、苦しんで。家福悠介から得るものは多くあった。同時に素敵な役者だってことは間違いない。
[box class=”glay_box”]名前:西島秀俊(にしじま ひでとし)
生年月日:1971年3月29日 (年齢 50歳)
出身地:日本
身長: 178 cm
[/box]おすすめ作品3選
[aside type=”boader”]売れない作家の隣部屋に引っ越してきた美女を穴から覗き、官能小説を完成させていく話。穴があったら入りたいのではなく、覗きたい。人の寂しいといった心理が上手に描かれている。
サイゲン大介さんをそのまま映画にしたかのような作品。(笑)これ観ちゃうと、むちゃくちゃお腹が空いてしまうぐらいやばい。
娘が脳死状態に陥ってしまったことで、最先端技術を活かして手を加えようとするも、二度と昔のような姿を取り戻すことができない現実に打ちひしがれた夫婦の話。言葉にならないくらいの衝撃作。
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最も美しいで賞
イ・ユナ役のパク・ユリム選んだ。理由は、作中で一番きれいな心を持った人間であったところに心を打たれてしまったから。そして、容姿も抜群にきれい。
役柄は、演劇祭で韓国手話を使用する女優を演じている。演劇祭のコーディネーターコン・ユンスの妻でもある。この2人の幸せそうな夫婦関係がしみじみ伝わってきて、こちらまで幸せな気分になった。
ラストを飾る演劇のシーンや屋外で立ち稽古するシーンでは、手話を駆使して表現豊かな彼女の姿が深く心に残った。思わず素敵な時間をありがとうと言いたくなる。
[box class=”glay_box”]名前:パク・ユリム
生年月日:1993年2月6日(29歳)
出身地:韓国
身長:163cm
Instagram:@nayurimu
[/box]おすすめ作品3選
[aside type=”boader”]建物の倒壊事故で家族を失った悲しみを乗り越えようとする男女4人の物語が描かれた作品。
それぞれが事情を抱える若者5人による恋愛&友情白書物語。不器用ながらも一生懸命相手と向き合い、どのようにして結論を出していくのか必見のドラマになる。
記録的な若さで編集長の座についた天才作家と、どうしても仕事が欲しい元人気コピーライターの2人による甘く切ない恋物語が描かれた作品。
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さいごに
こうやって自分が思ったことを書いてみると、捉え方としては我ながらいい線いっているような気がする。それに、数々の賞を受賞する理由がちょっとだけわかったような気がする。
観てインプットするだけでは情報の多さに脳みそがフリーズをしてしまい、情報の咀嚼すら拒絶してしまうので、これからも映画を観たらすぐにアウトプットしていきたいと思う。特にこの手の作品は頭で理解するには難しすぎるものがあるので。登場人物もなにげに多いですし。把握するのが大変。
機会があれば原作「女のいない男たち」を読んでみたいと思う。
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