『ボーダライン』非常識な世界が不快ではあるもののリアリティ映画としては最高に面白い作品!
上映時間 | 121分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
音楽 | ヨハン・ヨハンソン |
配給 | ライオンズゲート(アメリカ合衆国) KADOKAWA(日本) |
公開日 | 2015年(アメリカ合衆国) 2016年(日本) |
主な出演者 | エミリー・ブラント(ケイト・メイサー) ベニチオ・デル・トロ(アレハンドロ) ジョシュ・ブローリン(マット・グレイヴァー) |
どうも、バンコです。
いや〜、この映画本当に疲れます。
手に汗握るシーン満載で、一歩間違えると命を落としかねないこの世界を観てると、こっちまで寿命が縮まります。
映画だから大丈夫とか思っているかもしれませんが、緊迫した映像に煽られ重圧感のある背景音楽に煽られ、しまいには常識的な善が通用しないこの世界に身も心もズタボロです。
と、一番疲れる思いをしたのは、主人公のケイト(エミリー・ブラント)だと思いますけどね。
最後の結末なんて、納得いかないでしょうよ。
命とキャリアのどちらかを引き換えに選べと、銃を突きつけられてしまっては、もうそんなの答えは決まってますよ。
・・・。
果たしてケイトはどちらを選んでしょうね。(笑)
結末を知りたい方は、ぜひ自らの目で確かめてみてください。
この映画には常識なんてものは通用しませんから、色々とショッキングな思いをするかもしれません。
覚悟して観てください。
どんな映画なの?
あらすじはこんな感じ。
優秀なFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、メキシコ麻薬カルテルの全滅を目的とした部隊に入り、特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)のもとで極秘任務に就く。ケイトは早速、謎めいたコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共に国境付近の捜査を開始。人が次々と亡くなる現実を突きつけられたケイトは……。
引用:Yahoo!映画
うーん。少しわかりずらいですかね。
つまり、FBIも知らない謎の特殊チームがメキシコの麻薬組織ソノラ・カルテルの壊滅に追い込むさまが描かれています。
で、問題なのは麻薬組織を壊滅に追い込むまでのやり方が、かなり常識外れであんなことが日常的に起きていると思うともうメキシコには近寄れませんね。特に本作の舞台となったシウダー・フアレスには。
その前に行く勇気がありませんし、金もありませんからね。(笑)
麻薬組織の壊滅映画なんてほかにもたくさんあるけど、本作のどこが面白いの?
本作の見どころポイントとしては3つ。
1つ目:メキシコがいかに危険なところなのかその一部始終を目の当たりにすることができること!
本作で舞台となったメキシコのシウダー・フアレスというところは、世界一危険な場所として知られています。
テロ、殺人、誘拐、汚職、不法移民といった問題が年々深刻になっているようで、社会のモラルや法律がまったく通用しない”闇”の領域とも言われているみたいです。
もう最悪のワードが、ここぞとばかり並んでいますよね。どんだけやばいんだよ、メキシコ。うんでもって、シウダー・フアレス。
作中で描かれていたのは、ホントひどいものでした。死体があっちこっちに無残なかたちで転がっているし、子どもたちがサッカーの試合をしていると銃声が聞こえてきますし。
それに夜だって日々銃撃戦が繰り広げられていて、付き合いはじめた彼女と夜景でも見に行こうとか軽いノリで外出なんてできませんから。
基本、心が休まる瞬間なんてものはこの場所には存在しません。
今日生きてても明日にはどうなっているかわからないシビアな世界とは、まさにこのことです。
なかでも一番緊迫したシーンは、国境の検問で渋滞に巻き込まれるシーン。
このシーンに至るまでもかなりハラハラ・ドキドキしましたが、検問シーンではさらに緊迫感が高まる映像が映し出されていました。
どいつもこいつも怪しい奴ばかりで、果たして本当に奴らが銃をもって撃ってくるのか。一瞬の判断、一瞬の気を緩めないほど緊迫した雰囲気が漂っています。
このとき観る者にかかるストレスは、まぢハンパねぇと思います。
2つ目:エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリンお三方の素晴らしい演技に触れることができること!
人一倍正義感が強く、FBI捜査官の紅一点でもあるケイト。
そんな彼女を演じたのは、『プラダを着た悪魔』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』にも出演していたエミリー・ブラントになります。
彼女からは、シガニー・ウィーバーやリンダ・ハミルトンのようなタフさは感じられませんが、その代わりめちゃくちゃ色気があってセクシーです。
こんな色気のあるFBI捜査官がいたら、犯罪は増える一方ですよ。彼女に会いたいがために。(笑)
で、エミリー・ブラントの演技の何が素晴らしいかって。
FBI捜査官でありながら、何も抵抗することができないあの無力感。
”郷に入っては郷に従え”ということわざがあるように、今まで培ってきた価値観とか倫理観とかケイトが生きて学んできたことのすべてが根本から崩されていくさまは観るに耐えません。
人格が狂ってしまうほどの経験とは、きっとケイトのことを指すのでしょうね。
いい表情にいい演技をしてました。あっぱれ!
続いてはこの男。
どうしてかな。ベニチオ・デル・トロは男なのに色気を感じるのは。
ボクがゲイだから?いいえ違います。
彼の演技には、芸術的な何かがきっとあるはずです。そう、美的な何かが。
それを言葉で表現するのは難しいですが、映像で観てみて感じとってください。
ボクの言いたいことが、なんとなくわかるかなと思います。
最後は、ジョシュ・ブローリンになります。
作中で特殊チームの総指揮官マット・グレイヴァー 役を演じているのですが、彼から感じ取れる異様な違和感。
その違和感というのは、憶測になりますが彼もまたケイトのような経験をしてきたのかもしれません。辛く受け入れがたい経験を。
だからこそ彼の言葉一つひとつに重みが感じられるというか、すごく考えさせられます。
ある種、彼の言動に注目して観るのも人生の勉強になっていいかもです。
3つ目は、日本の平和を感じられること!
この映画を観てると、平和な国日本に生まれてきてよかったと心から思えます。
やりたいことができて、生きたいように生きれる人生が送れるここ日本で。
シウダー・フアレスで生まれていたら、今頃どうなっていただろうか。
マシンガン片手に乱射していたのかな。それとも命の危険にさらされていたのかな。
考えても考えても、もはや想像つきません。
危険がつきまとう過酷な環境で生活をしているこの世界で、一体どんな想いで人々は暮らしているのか。
そこで暮らす人々の気持ちを汲み取ることや感じ取ることはできても、ボクには共感することはできません。平和ボケしている日本で暮らしているうちは。
かといって、ボクはシウダー・フアレスに暮らす人々の気持ちに共感する覚悟はありませんので。
いつまでも平和な日本で生き、暮らしていきたいと本作を観て強く願いました。
ちなみに、麻薬組織が登場する映画はボクが知るなかでこの4作品です。
- 『今そこにある危機』(1994年)
- 『トラフィック』(2000年)
- 『アメリカン・ギャングスター』(2007年)
- 『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』(2013年)
どれもリアリティ溢れる内容で、本作同様かなり見応えがあっておすすめです。
さいごに
Amazonビデオのレビューや予告動画がなければけして観ることはなかった作品でしたが、予想以上の面白さに大満足しました。
いや、ほんと。こういう展開って結構嬉しい出来事なわけで、冒険してみてよかったと思います。映画通の方はわかってくれますよね、このボクの気持ち。
映画『ボーダーライン』は、ボクのなかの位置づけとして人生の哲学を学べる教養作品であると思っています。
大げさかもしれませんが、色々な視点で観るとまた違った面白さを味わえると思います。また時間を置いて鑑賞するつもりです。
戦争系や麻薬組織系の映画が好きな方はもちろんのこと、映画から人生の何かを学びたいと思っている方にもおすすめですので、ぜひ鑑賞してみてください。