映画『いぬやしき』父親の視点で観る分にはおすすめしない作品
上映時間 | 127分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 佐藤信介 |
音楽 | やまだ豊 |
主題歌 | MAN WITH A MISSION「Take Me Under」 |
配給 | 東宝 |
公開日 | 2018年 |
主な出演者 | 木梨憲武(犬屋敷壱郎) 佐藤健(獅子神皓) 本郷奏多(安堂直行) 二階堂ふみ(渡辺しおん) 三吉彩花(犬屋敷麻理) 生瀬勝久(ミヤノ) 濱田マリ(犬屋敷万理江) 斉藤由貴(獅子神優子) 伊勢谷友介(萩原刑事) |
木梨憲武演じる犬屋敷壱郎に対する家族や会社からの仕打ち、壱郎自身に対しても嫌悪感を終始抱いてしまった、けどバトルシーンなどは白熱して面白い、なんとももどかしい作品。
キャラクターの設定がややGANTZを思わせる内容で、現実と非現実のギャップがうまい具合に調和がとれていましたので、冷ややかな視線を送ることなく楽しむことができました。
こちらの作品、想像以上によかったです。
あらすじ
新宿上空250メートル
ジジイvs高校生
定年を間近に控える冴えないサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)は会社や家庭から疎外された日々を送っていたが、ある日突然、医者から末期ガンによる余命宣告を受け、深い虚無感に襲われる。その晩、突如墜落事故に巻き込まれ機械の体に生まれ変わった彼は、人間を遥かに超越する力を手に入れることに。一方、同じ事故に遭遇した高校生・獅子神皓(佐藤健)は、手に入れた力を己の思うがままに行使し始めていた。自分の意志に背く人々をただただ傷付けていく獅子神と、獅子神によって傷付けられた人々を救い続ける犬屋敷。
人間の本質は善なのか、
それとも悪なのか…?
強大な力を手に入れた二人が、
いま、それぞれの想いで動きだす———。
感想
犬屋敷家の大黒柱でもある壱郎は定年間際の冴えないサラリーマンで、娘の麻理からは雑にあしらわれ、妻の万理江からもけちょんけちょんに扱われるなど、頼りない父親を木梨憲武さんが見事に演じきっています。
息子の剛史にでさえもなめられ、男としても全然ダメな人間像を醸し出していました。
観る側からするとこれがかなりのストレスで、どうしてもっとしっかりしてくれないんだよとイライラ&悶々してしまいます。
医者からガンを宣告されてしまい、いつ死ぬかもわからないときに頼みの家族はみんな電話に出ないシーンとかは、普通に悲しい気持ちになりました。
どんだけ悲惨な人生を歩んでいるのでしょうか。もし家族から同じような態度をされてしまったらと考えると、悲しいってもんじゃありません。そういうレベルの話じゃないような気がして、生きるの辛いってなります。
壱郎の性格が心優しいとかの次元を超えて、もはやこんな人間現実問題この世にいるのかなとさえ思ってしまうほど、いい人すぎてかなり萎えました。そして見るだけでイライラするので、ところどころで喝を入れたくなりました。
壱郎はそういう人間です。
そんな人間が突然サイボーグのような身体を手に入れてしまい、その後どんな展開になるのか期待していましたが、ひと言でいえば必死でした。
大切な人を守るため、世界を救うため、必死に悪者と戦っていました。しかし残念なことに、これがまったくかっこいいとは思えず……。
普通ならかっこよく見えるものですが、キャラクターの設定が影響しているのでしょうか。すんなりと受け入れることはできませんでした。
むしろ壱郎に対しては、「なにちんたらしているんだよ、早くやっつけてしまえよ」とさえ思ってしまったぐらいです。
これ、俗に言う生理的に受け付けない部類の話になります。人としてはけして悪くはありませんが、この手のタイプの人間とは関わりを持ちたくないと野生の勘が働いてしまい……たぶん、根本的に苦手なんだと思います。
そういった意味で、二度は観ようとは思えませんでした。
1回で十分と言うのは壱郎のキャラクターが苦手といった理由以外にも、佐藤健さん演じる獅子神皓の残虐ぶりが異常だったからです。
友人の安堂直行が劇中で言ってたセリフで、「簡単に人を殺すとか無理だから」。……うん、そりゃそうだよね、わかる。
手を拳銃にして「バン」と言うだけで人を殺すことができる皓は、彼もまた壱郎同様にサイボーグのような身体を手に入れてしまった人物のひとりです。
モニター越しからも人を殺すことができてしまい、母を助けたい一心で後半はテロリストよりも亜人よりもたちの悪い悪者でした。稀に見る胸糞悪いシーンが描かれており、まさしく二度は観ようとは思えませんでした。
今までいい役柄を演じることが多く佐藤健さんに対して好印象を抱いていました。が、本作に限っては全然ダメで。クズ人間、そして嫌いの域を超えてしまいました。
まあ、いちを言っておきますが、佐藤健さんの人柄ではなく役柄に対する感情の話です。そういう風に観る者の感情を動かせるのは、素晴らしい役者って証拠です。本当にすごいと思います。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
正直、この役柄かっこいいなと思えるようなキャラクターは登場していませんでしたが、しいて挙げるなら本郷奏多さんが演じていた安堂直行はきちんとした人間の血が通っていてよかったなと思いました。
普通なことなんですけれども、本作の世界観ではこれが普通じゃなくて。きちんと血の通ってない人間が多すぎ、と言ってもそれは皓ひとりだけですけど。
あまりにも衝撃的なシーンが多すぎて、錯覚なんて簡単に起こしてしまいます。いじめられっ子の直行を守るところまではよかったですが……。
直行は直行で逆に、皓のことを救おうとする姿はかっこよかったです。人間だからこそ友達だからこそやれることがあって、自分自身が今やれることを直行は行動に起こしていたように思います。
怖いから逃げるのではなく立ち向かうってとこに、今回この賞にふさわしい人物として選びました。
最も美しいで賞
断然、断トツでこの女優さんかなー、と。犬屋敷麻理役を演じていた三吉彩花を選びました。
役柄としては、壱郎に対して父親とは思っていないと本人に向かって言い放つわ行動で示すわで、かなり過激でした。けど、女優としてはかなり魅力的でした。
色気が溢れているというか、個人的なことを言えば小松菜奈に続く美女のなかの美女のひとりです。めちゃくちゃ透明感があるなかで、今回の役柄に関してはやや複雑な気持ちを抱きましたが、最後壱郎との関係はハッピーエンドだったのですごくすごく安心しました。
父親である壱郎と本当はそんな関係を築きたかったのではと、娘の反抗期にいずれ僕自身も巻き込まれてしまうのかなと思うと心が痛みます。こんな可愛らしい娘をもったらお父さんのほうが大変そうです。
さいごに
父親の立場で観てしまうと心がギュッと痛み続ける作品ではありますが、内容は家族や世界を救おうとする冴えないサラリーマンのヒーロー物語ですので、何も考えず観る分は楽しめました。
普段テレビで見る木梨憲武さんとは違って、落ちぶれ度が特に際立っていたような気がしましたし、全然ナイスないい演技をしてました。
まったく想像つきませんが、木梨憲武さんと佐藤健さんの異色コンビが繰り広げる作品ではありますので、それだけでも見どころ満載です。