映画『青の帰り道』ときめかない、人間関係のリアルさを追求した青春作品
上映時間 | 120分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 藤井道人 |
原案 | おかもとまり |
主題歌 | amazarashi「たられば」 |
配給 | NexTone |
公開日 | 2018年 |
主な出演者 | 真野恵里菜(カナ) 清水くるみ(キリ) 横浜流星(リョウ) 森永悠希(タツオ) 戸塚純貴(コウタ) 秋月三佳(マリコ) 冨田佳輔(ユウキ) |
青春とやらを疑似体験したくて……観てみました。キュンキュンするかな、ドキドキするかな。女子率高めの言動を放っていますが、気にしないでください。
で、観た感想はというと、想像していた内容よりもずいぶんとイメージが異なりました。観る側にとって夢を与えるような内容かと思っていましたが、けっこうな勢いで厳しいリアルの世界を描かれていました。
夢散るし、人も散って……これなんやねんって、感想を抱きました。
あらすじ
2008年、東京近郊の町でまもなく高校卒業を迎える7人の若者たち。歌手を夢見て地元を離れ、上京するカナ(真野恵里菜)。家族と上手くいかず実家を出て東京で暮らすことを決めたキリ(清水くるみ)。漠然とデカイことをやると粋がるリョウ(横浜流星)。カナとの音楽活動を夢見ながらも受験に失敗し地元で浪人暮らしのタツオ(森永悠希)。できちゃった婚で結婚を決めたコウタ(戸塚純貴)とマリコ(秋月三佳)。現役で大学に進学し、意気揚々と上京するユウキ(冨田佳輔)。7人がそれぞれに大人への階段を上り始めて3年後、夢に挫折する者、希望を見失う者、予期せぬことに苦しむ者――。
7人7様の人生模様が繰り広げられる。そして、再び“あの場所”に戻った者たちの胸に宿る思いとは――。
感想
いろいろありすぎて理解が追いつかない
ひと言でいえばよくわからない内容の作品でした。というのも最終的になにが伝えたかったのか、最後の最後までぼくにはよくわかりませんでした。
東京の厳しい世界についてなのか、優しい人間ばかりではない世界についてなのか、自殺の世界についてなのか。正直テーマをいっぱい盛り込みすぎなんじゃないかと思いました。
ぼくみたいな人間は複数のテーマがありすぎてしまうと、捉えられないというか記憶に定着しにくく、結果理解できないまま終わってしまうパターンがほとんど。そうなってくると、あれなんでかなと一連のシーンが思い出せないなんてことはざらにあります。
意識が分散されてしまい印象が残らないぶん、特にこれといってよくわからなかったという感想に結びつきやすいわけです。面白い面白くないの話は別として。
何回か観ないと理解ができないので、1度で理解できる頭があればよかったのかなと思います。
登場人物について思うこと
登場人物について、それぞれ言いたいことをつらつら書いていきたいと思います。
まずは、リョウについて……。いやいやいや、普通に犯罪やってはるやん!それ許してええんとちゃうの?だめやろー、と常識を疑いました。完全にアウトのやつですよね。
そのことを周りのみんなは知らないってのもありますが、最後にはへらへらとのんきに笑って過ごしている姿に妙に違和感を感じたのはぼくだけでしょうか。
リョウは暴行事件で捕まっただけじゃないんですよー、とみんなに言いたいし、知ってほしい。だってそれがリョウという人間性なんだから。
やっぱりのんきにへらへら笑って人生を謳歌しているのは、なんだか許せないなー、と思うところがありました。正義の味方ではありませんが、それくらいの制裁は必要だと思うわけです。知らないってほんと怖いんだなと思いました。
作品自体はハッピーエンドで終わりましたが、ぼくとしては上記のことを思うとバッドエンドでした。生きるためとはいえ、それ邪道ですからね。
続いてキリについてですが、彼氏からDVを受けているのにも関わらずまったくもってアザが見当たらなかった……ってどうなの?
見えないようにしてたかもしれませんが……。あれあれあれ、完全に顔面を手のひらでぶたれてましたよね。あの勢いで赤くならないって、内出血をおこさないって、どうなの?
彼女はAIなのか、それとも宇宙人なのか、いや神なのか。この際どっちでもいいですが、ちゃんと血の通った人間にしか見えなんだから、そういうところにちゃんとこだわってほしかったです。ほら、神は細部に宿るといいますし。
彼女の人生を見てると東京って、街や人間は怖いんだなって変な風に捉えられてもおかしくありませんでした。これって東京に住んでいる人から反感を買わないかなって思っちゃいました。
引っかかるほうも、引っかけるほうも悪いんだろうとは思いますけど、それ言っちゃうと……ほら、もうなにも書けなくなってしまいますから、ね。
じゃ、カナはというと悲惨でした。かわいそうを通り越して、はっきり言って本当に悲惨でした。
キリの場合とまた違った視点で、東京で夢を追う厳しさみたいなものが描かれていたので、これから東京で一泡吹かせてやろうと思っている人にとっては、物事を冷静に考えさせられるいいきっかけになるかも、です。
途中までは順風満帆にいっていたんですけどね。人生ってそういうもんなんでしょうね。
チャーリー・チャップリンの言葉のように悲劇を喜劇に変えられたらいいのでしょうけれど、人生はそう甘くはありませんし。そんな余裕なんてそうそうありませんよね。
ただ、ある種一線を超えてしまうような経験をされていたので、ステータスとしては最強かなと思いました。ひと皮もふた皮も剥けてなんでもやり遂げられそうな、そんな気迫が感じられました。
奈落の底へ落ちたあと復活したカナを見ると、人間ってすごいんだなって純粋に思いました。
ユウキはというと、ただ単に職種のミスマッチを起こしていただけの人間でした。それが原因で職場の上司からいじめられるというかわいそうな状況ではありましたが、その状況で仕事を辞めないってことは彼はMなのかな。
就職氷河期でもないでしょうし。いや、わかりませんが。どんだけ人がいいんだよって感じのキャラクターです。正直、めちゃくちゃ存在は薄かったですけどね。
所詮、脇役だったってことです。
コウタとマリコに関しては、特に言うことはありません。理想のカップルであり家族像でした。幸せが溢れすぎて、まっとうな人生を歩むとはこういうことなんだろうなー、と思いました。
コウタはいいパパだし、マリコはいいママだし。ほんと言うことありません。
最後タツオはというと、ひとつ言いたいことがありまして。父親からぶたれたときの倒れ方は反則でした。深刻なシーンではありました、けど。笑ってしまいました。
だって倒れ方がおかしんですもん。監督も、ようあれでオッケーだしたなー、と思いました。
直立ストレートに倒れてはるやん。それって絶対笑かしにきてはるやん、って思いました。
彼の身に起きた出来事に対してはけして共感することはできませんでしたが、さきほど言ったようにそのシーンだけは無駄に印象に残ってしまい、おかげでうまく世界観に入り込めませんでした。
思い出しただけでも笑いがこみ上げてきそうなので、よっぽどのコメディアンですよ、タツオは。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
工藤夕貴さんが演じたキリの母・冴子を選びました。女性ですけどとにかくかっこいいですよ、このお母さんは。
いやね、はじめは娘の夢すらも応援できないろくでもないお母さんだなー、とか思っていましたけど。実は一番娘のことを考えてくれていたことがわかったときには、それこそ感動でした。そのためだけに観たといってもいいくらい価値がありました。
スナックのママをやっていて女ひとりで子育てをして、大変な一面を見せないってのが一番心にぐっときます。育児に仕事に働くママは本当にかっこいいです。
最も美しいで賞
顔の好みでいえばキリ役の清水くるみさんなんでしょうけれど、人間性の美しさでいえば秋月三佳さんが演じたマリコの人柄はやばかったです。
言葉悪いですが学生のときはバカっぽく見えましたが、ママになってからは1番魅力を放っていたように思います。これが俗に言うギャップってやつですかね。
コウタとの間に子どもを授かったときには、てっきり育児ノイローゼ的な路線で描かれるのかなと思っていましたが、まさかのネガティブ要素がなにもないという展開に。
登場人物の扱い方のギャップに逆に驚きました。えっ、そこなにもないんだ、と。
だからなんでしょうね、幸せなオーラ全開のコウタ・マリコ夫婦が1番観てて安心しましたし、よかったと思うのは。こっちまで幸せになれて、久々にいいもん観れたという感じです。
さいごに
思うような青春とやらを得ることはできませんでしたが、ひとつわかったことは青春というのはあまりにも繊細で脆くて壊れやすくて、いっちょまえに勢いだけは若さゆえにあるもので、でも結局は崩れさるのだけは異様に早い。青春ってのは、そんなもんなのかなと本作を観てそう思いました。
ぼく好みではありませんが、どちらかといえばリアルさを追求した青春作品なのかなと思います。キュンキュンどころか、ひやひやする展開の連続でまったくときめかなーーいでした。