映画『ヤクザと家族 The Family』今、ヤクザとして生きる意味と生きづらさを描いた作品
上映時間 | 136分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 藤井道人 |
音楽 | 岩代太郎 |
主題歌 | millennium parade「FAMILIA」 |
配給 | スターサンズ KADOKAWA |
公開日 | 2021年 |
主な出演者 | 綾野剛(山本賢治) 舘ひろし(柴咲博) 尾野真千子(工藤由香) 北村有起哉(中村努) 市原隼人(細野竜太) 磯村勇斗(木村翼) 菅田俊(竹田誠) 康すおん(豊島徹也) 豊原功補(加藤雅敏) 駿河太郎(川山礼二) 寺島しのぶ(木村愛子) |
こ、これは、言葉にならないくらい、えぐられた。
暴力団排除条例の制定によって、その後の暴力団の生きる姿が描かれているんだけれども、中々むごかった。普通に生きてたらまったく知らずに人生終わってた。むしろ、その予定だった。けど、知ってしまった。すごく考えさせられた。
時代って、こうも変わるんだなーと思いつつも、ある意味法律の恐ろしさを知ってしまった。
あらすじ
ヤクザという生き方を選んだ男の壮大なヒューマンストーリー。 自暴自棄になっていた少年期にヤクザの世界へ足を踏み入れた男を中心に、暴対法によって変わっていった環境と共に1999年、2005年、2019年と3つの時代で見つめていく、一人の男とその【家族・ファミリー】の壮大な物語。
引用:Filmarks
感想
これは、ただのヤクザ映画ではないよね。序盤はいかにもヤクザって感じの展開でしたけど、中盤〜終盤にかけては違ってた。
心に染み渡るような内容だった。食べ物で言うところの味噌汁のようなしみじみとするような類のものではなくて、けして心優しくない、険しく辛い。生きる人権すら奪われてしまった過酷な世界で、ヤクザとして生きてきたことがない人間は一体どう生きればいいのか。法律によって奪われてしまった人権が、どのような形でその人の人生に影響を与えてしまうのか。
ヤクザの立場だけでなく、関係する者の立場についても描かれていたので、物語の奥行きは深かった。ゆえに、同情心がハンパねぇー。家族?娘?友人?、絆の描き方がえらいこっちゃです。
ヤクザ映画にありがちな抗争物語と思ったら、そんなのちゃいます。むしろ、序章にもならないくらい触れられていない。てっきり、「俺のタマでも取ってみるか」、この言葉が抗争の合図かなと思っていたけど、違ってた。
柴咲組の組長が、敵対する侠葉会の若頭・加藤に対して言い放ったセリフなんだけれども、このときの舘ひろしの気迫の演技といったら、それはもう漢気が感じられてかっこよかった。ほろ酔い気分でしびれた。
その反面、それはどっちのタマなんだい?と、ブラックジョークをかますことでその場の雰囲気を和らげてあげたくもなったけど。その後、たぶん、速やかに殺されてしまうのは容易に想像ができた。だけど、それくらいの気概があったことは察してほしい。
冗談はさておき、この作品の1番の立役者は間違いなく綾野剛の名はあがる。柴咲組に入るシーンは、個人的に名シーンのひとつ。あかん、緊迫した空気がひしひし伝わって、和太鼓を叩く効果音がこれでもかというくらいベストマッチしてた。
あれだけかっこいいシーンをまじまじと見せつけられたわけですから、形だけでもいいので誰かれ盃とやらを交わしたくなったのは僕だけじゃないはず。ほんと、形だけのやつを頼みたい。
じゃないと、今の世の中ヤクザとして生きるのにはあまりにも窮屈な世界を歩まないといけないみたいで、「義理人情だけじゃ食っていけね」、このセリフにすべてが集約されていた。
ヤクザをやめて最低でも5年間は、人として扱われないことを知った。そんなのゴキブリ以下じゃねぇーかよ、と思いながらも、それだけのことをやってきたのだから仕方ないといえば納得せざる負えない。
でも、だからといって、家族や職までも失ってしまうのは、いくらなんでも心が痛みすぎる。しかもヤクザと関わりをもっている人にも影響を及ぼすので、一気に人生が転落する。
今まで親しかった友人が変によそよそしかったり、その距離感の描き方もリアルで。可愛そうとか、慈悲の気持ちを抱くレベルのものじゃなくて、絶望の2文字を象徴してた。
特にやばかったのが、山本賢治の妻として関わってしまったがゆえに、職を失い、社宅からも出ていかなければいけなくなり、娘は転校を余儀なくされ、誰も知らない場所へ逃げていくその過程は、まー、悲惨なものだった。
その妻である工藤由香から放たれる情け容赦ない数々の罵倒の言葉も、心の奥のまたさらに奥の部分にぐいぐい刺さってしまうほどの効力で、聞いてるこっちが耐えられなかった。あー、切ない。本気ではないことぐらいはわかる。けど、ぶつけようのない怒りを全部出しきらないと狂いそうなこともわかる。そういうのを目の当たりにしてしまうと、なんと言っていいやら途端に言葉に詰まってしまう。
法律によって変えられてしまった人間の心の脆さ、生きるためには義理だろうがなんだろうが背に腹は代えられない現実社会。良くも悪くも法律によって僕たちは生かされていると思うと、複雑な心境しか残んねかったです。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
言うならば、この作品に出演している俳優全員かっこいいといいたい。舘ひろし演じる柴咲博もかっこよかったけど、豊原功補演じる加藤雅敏も同じようにかっこよかった。けど、やっぱりここは綾野剛演じる山本賢治を推したい。理由は作品の中心人物で、感情の縦横無尽さが桁違いだった。
父が殺され、組に入り、恋をして、友人を亡くし、組は崩壊寸前、家族の存在を知り、職を得たかと思えば、一気に奈落の底へ転落、組長は病死寸前で、2つの家族を失った男は、なにを糧に生きていけばいいのか、わからなくなる。どうでしょー、これ。個人的に1番複雑な役柄だったと思う。
[box class=”glay_box”]名前:綾野 剛(あやの ごう)
生年月日:1982年1月26日 (年齢 39歳)
出身地:日本(岐阜県)
身長:180 cm
血液型:A 型
オフィシャルサイト:綾野剛 OFFICIAL SITE – Tristone Entertainment Inc.
Instagram:@goayanoofficial
[/box]おすすめ作品3選
■ 映画
- ピース オブ ケイク(2015年)
同名コミックを映画化したもの。多部未華子と綾野剛の共演作。若者の恋愛話が描かれていて、女子は共感度高め。男子は多部未華子魅力に惚れる、はず。脇役の松坂桃李、菅田将暉、柄本佑、中村倫也の超豪華キャストにも注目。
- 亜人(2017年)
上と同じ、同名コミックを映画化したもの。綾野剛は悪役として登場。とにかくアクションが激しく、しかもスピーディーで、無双劇は一見の価値あり。
- 楽園(2019年)
犯罪小説集を映画化したもので、もちろん物語は暗い。未解決の事件を追う内容で、実際に起きた話。綾野剛の感情表現の演技のうまさが光っている。
■ ドラマ
- 最高の離婚(2013年)
最高の離婚とは言うものの、迷える二組の男女が結婚と離婚のはざまで成長を描いた等身大のラブ&ホームコメディドラマ。登場人物らの掛け合うセリフがとにかく素敵すぎて、語彙力の勉強にもなる。
- 空飛ぶ広報室(2013年)
報道記者の夢を断たれた女性ディレクターと元戦闘機パイロットの自衛隊広報官が、新たな夢を見つける姿を描いた作品。いちいち泣けてきて、せわしいドラマです。
- コウノドリシリーズ(2015年)
産婦人科医の現場を描いたヒューマン医療ドラマ。子を持つ親御さんなら、間違いなく泣く。ハンカチ必須の作品。
最も美しいで賞
尾野真千子か寺島しのぶかで選ぶなら間違いなく尾野真千子でしょ、この場合。いや確かに、寺島しのぶ演じる木村愛子はいい人だった。いい人ってもんじゃない。ただ、それ以上でも、それ以下でもなくて、それ止まりだった。
僕がもう少し年齢を重ねた年頃なら……。いや、それでも普通に若い子を選ぶと思う。そんなわけで、尾野真千子を選んだ。ほかに選択肢がなかったといえばそうなるけど、演技自体神がかってはいた。
「あんたのせいで、あんたさえいなければ、今まで幸せに暮らしていたのに……」
この胸が締め付けられそうなセリフのシーンは、ただただ切なかった。本当に切なかった。言うほうも言われるほうも、報われないことだから余計に辛かった。1番人間の醜い部分が出てたシーンだったので、人間臭いというかリアルというか、美しさの一面も感じられて、いや、ほんと、見事な演技でした。
[box class=”glay_box”]名前:尾野 真千子(おの まちこ)
生年月日:1981年11月4日 (年齢 39歳)
出身地:日本(奈良県)
身長:161 cm
血液型:A 型
[/box]おすすめ作品3選
■ 映画
- そして父になる(2013年)
赤ちゃんの取り違えを出来事に、家族の在り方を描いた作品。今の時代でそこないとは思いますが、当時はよく耳にしたことがある出来事。父親必見。
- 神様はバリにいる(2015年)
バリの兄貴の体験談をいい意味で大げさにした作品。個人的にナオト・インティライミの役柄がツボ。そしてなにより、エンドロールに流れる湘南の風の「BIG UP」が素敵。
- 茜色に焼かれる(2021年)
今の混沌とした時代を舞台に、開いた口が塞がらないほど不幸な人生を送る人物の姿を描いた問題作。リアル中のリアルを追求した、観る者の感情を縦横無尽に揺さぶりにかけてくる、生命力溢れる作品。
■ ドラマ
- Mother(2010年)
5歳の芦田愛菜が出演する、感動の物語。泣きたいときに泣けるドラマといえば、これ。母親は必見。
- カーネーション(2011年)
世界的デザイナー・コシノ三姉妹の母としても知られる、小篠綾子をモデルにした物語を描いた作品。人生哲学にもなる要素が盛りだくさん。
- はじめまして、愛しています。(2016年)
養子の子育てに苦闘しながら常に深い愛情を示す夫婦の姿を描いた作品。毎回泣かされるので、涙腺崩壊にご注意ください。
さいごに
ヤクザ映画の中でNo.1というよりかは、邦画部門の中でも上位を占めてもおかしくないんじゃないかと思うほど、良作。まだ観れてないけど、2回観ようと思った。ネット上でも話題になってて、観るとその意味がわかる。そして、深く頷く。間違いないと。Netflixで絶賛配信されているので気になる方はぜひ鑑賞を。
[btn class=”big”]Netflixを利用する[/btn]