『ウインド・リバー』アメリカの黒歴史をストレートに描いた作品
上映時間 | 107分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
監督 | テイラー・シェリダン |
音楽 | ニック・ケイヴ ウォーレン・エリス |
配給 | ワインスタイン・カンパニー(アメリカ合衆国) KADOKAWA(日本) |
公開日 | 2017年(アメリカ合衆国) 2018年(日本) |
主な出演者 | ジェレミー・レナー(コリー・ランバート) エリザベス・オルセン(ジェーン・バナー) グラハム・グリーン(ベン・ショーヨ) ケルシー・アスビル(ナタリー・ハンソン) ギル・バーミンガム(マーティン・ハンソン) |
“今、地球上ではなにが起きているのか”
インターネットで調べればなんでもわかってしまうこの世の中で、強制的に移住をさせられてしまい、政府からは見捨てられ貧しい生活を強いられている人々がこの世に存在していることを、本作を通して知りました。
実話に基づいて制作された作品であり、あまりにもひどいという言葉では片付けられない、グサッと心がえぐられるような内容の本作。
アメリカの黒歴史でもあるネイティブ・アメリカンの今を描いた作品です。
これは観とかないと、ある意味やばいかも。
あらすじ
アメリカ、ワイオミング州。先住民族が住む深い雪に囲まれたウインド・リバーで、地元のベテランハンターであるコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)が女性の遺体を発見する。FBIの新人捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)が派遣され、1人で捜査を開始するが雪山の厳しい自然環境や不安定な気候で難航する。ジェーンは、ウインド・リバー一帯に詳しいランバートの手を借りて調べを進めていく。
引用:シネマトゥデイ
感想
重要なのは誰が犯人とかではなくてすべてが事実だってこと
さきほども言ったように、本作はネイティブ・アメリカンの今が描かれた作品で、なにも知らなければ単なるクライム・サスペンス映画としての見方で終わってしまいます。
ボクは本作のラストで表示される、「数ある失踪者の統計にネイティブ・アメリカンの女性のデータは存在しない。実際の失踪者の人数は不明である。」というテロップを見て、どうして、なぜ、ネイティブ・アメリカンの女性のデータは存在しないのか。
なにか歴史的なことが関係しているのか気になって調べたのがきっかけで、本来伝えたかったことを知ることができました。
知識を得てわかったことが、ネイティブ・アメリカンの今を描いたというものに繋がってきます。
確かに、アメリカの国旗が逆さになっていたシーンがあったり、死を悼むために儀式の化粧を自己流でやっていたり、と。
ドラッグやアルコールに溺れている痛々しいシーンなどもあって、こんなことが世界のどこかで実際に起こっていると思うと、ここ日本での生活にありがたみを感じられずにはいられません。
こんなところにいたら、心があっという間にすり減ってしまいそうです。
意図がわかってはじめて面白さが増してくる
本作のラストで表示されるテロップがなければ、今ごろネイティブ・アメリカンについて調べることはありませんでした。
故に、ボク自身、この作品は単なるクライム・サスペンス映画で終わっていたのかなと思います。
そう考えてしまうと、少し恐ろしくも思います。だって、ネイティブ・アメリカンのことを知ってはじめて本来の面白さというものを味わえるからです。
この味を知っていなければと考えたくもありませんが、あえて考えた末見えてきた答えは損をしていたという回答に落ち着きました。
正直、クライム・サスペンスとしては微妙だったように感じます。
ストーリーにおひねりを加えて犯人を導き出す展開よりも直球ストレートに描き、どちらかといえば緊迫感の演出に力を入れていたように感じました。そこが良くも悪くも際立っていたような気がします。
俗に言う、手に汗握る展開という類のものです。
まあ、なにはともあれ、本作を観終わったあとは気になったシーンのことをいろいろ調べ深掘りしてみると、見方が180度変わって面白味に深みが増しますよ、という話です。
コリーの生き様がとにかくかっこよすぎる
作中に、「あんたは、ここの人間じゃないだろ?」というセリフのシーンがあります。
これはナタリーの兄がコリーに対して言い放った言葉です。そのあと、離婚が成立した妻と原因がわからないまま亡くなってしまった娘のケイシーのことを軽々しく口に出してしまい、コリーの逆鱗に触れてしまいます。
このことから、コリー自身はネイティブ・アメリカンとは無縁のよそ者であることがわかります。
ただ、なんででしょうか。なぜか周囲からの信頼は絶大で、ネイティブ・アメリカン以上に文化を重んじているというか、コリー自身が誇りを感じているような気もしました。
そんなコリーは、ハンターとしてもかっこよく、男としてもかっこいい人物です。常に冷静沈着で、FBI捜査官のジェーンが捜査で見落としている箇所を導いてくれる優しさもあります。
そしてなによりも男を感じたところは、犯人に対して紳士的な対処を行ったシーンです。
亡くなってしまったナタリーがどれほど苦しんで耐えたか。犯人にも同じ条件を与え、この先はないとわかっててもあえて学びを与えようとするその姿勢からは、復習の腹いせというよりも倫理観や道徳観を教えているようなというふうにボクは捉えました。
一番恐ろしいのは、コリーのような人物に一度狙われてしまったらおしまいですけどね。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
声を大にして言うまでもありませんが、マット役を演じたジョン・バーンサルになります。
えっ、コナー役を演じたジェレミー・レナーじゃねえのかよ、と思うのかもしれませんが、そのお気持ちは十分わかります。
でも、立ち止まってよく考えてみてください。
屈強な男たちに立ち向かい、身を投げ出してまでも大切な人を守ろうとしたその姿を見て、心が動かされてしまいました。
コナーはコナーの男らしさというものがありましたが、マットはマットの男らしさを存分に発揮していたように思います。一番かっこいい存在ではありましたが、同時に一番かわいそうな立場の役柄もありました。
もし、ボクが同じような立場だったらと考えても、マットの行動には共感できるものがありました。
全体的に出演時間は少なめではありましたが、存在感自体は『ウォーキング・デッド』や『パニッシャー』で実証済みで、やはり印象に残るような人物でした。
最も美しいで賞
女性2人からTバック姿を見せつけられて、非常に甲乙つけがたいところではありましたが、ここは好みの問題もあってFBIの新米捜査官・ジェーン役を演じたエリザベス・オルセンを選びました。
薄々タヌキ顔であることは、『アベンジャーズ』時代から気付いてはいましたが。その辺は気付いていたとしても、今まで気付いていないふりをしていました。時には自分自身にそんなことはない、と言い聞かせたりもしましたが……やはり物事にも限界というものがありまして。
スカーレット・ウィッチ役の化粧や衣装の問題ではなくて、そもそもそうだったのかと避けては通れない事実を目の当たりにする経緯に至りました。
ただ、これだけは言えます……。
”美しい、そして、かわいいことに変わりはない”
今までは魔法使いのような役柄を演じる姿しか見慣れていなかったので、本作では新米ぶりが新鮮すぎて可愛いと思えるシーンがいくつかありました。けして、ゲレンデマジックではないと思います。
好みの問題もありますが、少しでも彼女のことが気になっている方は、ぜひ、その目で焼き付けていただきたいです。
さいごに
2018年に日本で劇場公開されてから、映画評論家や映画ブロガーたちの考察レビューが、ネットの至るところで確認されています。多くの人々がどうして関心を集めているのか、本作を通して学ばれてみてください。