映画『万引き家族』家族というものが好きになる作品
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上映時間 | 120分 |
製作国 | 日本 |
監督 | 是枝裕和 |
音楽 | 細野晴臣 |
配給 | ギャガ(日本) マグノリア・ピクチャーズ(アメリカ合衆国) |
公開日 | 2018年 |
主な出演者 | リリー・フランキー(柴田治) 安藤サクラ(柴田信代) 松岡茉優(柴田亜紀) 城桧吏(柴田祥太) 佐々木みゆ(ゆり) 樹木希林(柴田初枝) |
犯罪でしかつながれなかった家族のかたちとは、一体どういうことなのか。また、その家族はどんなかたちを形成しているのか。
劇場公開するやいなや瞬く間に大ヒットとなり、その影響は海外まで及ぼしました。第71回カンヌ国際映画祭では、最高賞であるパルム・ドールを獲得しました。
日本では日本アカデミー賞作品賞を受賞するなど、思った以上にすごい作品です。
邦画を精力的に観ている身分としては、本作は見逃すわけにはいかないと思い、デジタル配信が開始された4月3日に観ることにしました。
あらすじ
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。
冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。
引用:Filmarks
感想
日本の社会問題を描いたリアリティ作品
結局、モノでも街でも人が作り上げるものですから、完璧なものはこの世には存在しません。
人である以上、物事を見逃してしまいますし失敗だってすると思います。法律にしても制度にしても、抜け穴はまだまだたくさんあるのが現状です。
日本だからといって、まんべんに福祉サービスが行き届いているかといわれればそうでもありません。
やはり、貧しい家庭もあれば裕福な家庭があって、どちらの家庭にもお金のことは一生つきまう問題なのかなと思います。
年金の不正受給、児童虐待、育児放棄(ネグレクト)……などなど。
生きるためには犯罪に手を染める行為もあたり前になってくるのは、ごく自然なことだと思います。
だからといって犯罪に手を染めていい問題でもありませんが、綺麗事で世の中生きられるのなら現に社会問題になっていないと思います。
今なお日本のどこかで実際に起きている現実を知る権利が、私たちにはあると思います。目を背けずにすべての人たちが受け止めるべき内容であると思います。
そして、これからどうするべきか。そのことを考えるきっかけとなる作品でもあります。
犯罪家族から見るもうひとつのテーマ
悪いことはしちゃいけないよね〜で片付けられたら、なんといいことか。
残念ながらこの世の中そんな単純ではないことを本作で思いっきり描いています。
本作を観てると、なにが正しくてなにが悪いのか。血がつながっていなくても幸せそうな家族の姿を見せつけられてしまうと、物事を冷静に見て判断することができなくなってきます。
頭では理解できることでも、心が追いつかないような状態で。ただ、そんな中でも、自分よりも幼いゆりを巻き込むことで万引き生活に疑問を抱く祥太くんの姿を通して、ある意味これはひとつの希望でもありました。
救いようがない人間というのはけしていないと思いますし、単にきっかけがなかっただけで、家族の絆にも徐々に変化が見られます。
「家族とはなにか?絆とはなにか?」
日本の社会問題だけでなく、是枝裕和監督が伝えたかったもうひとつのテーマなのかもしれません。
……深いなー。
安藤サクラによる圧巻の名演技
ひと言でいえば、炸裂してました。
警察から事情聴取されているシーンがアドリブだなんて信じられませんでした。屁理屈でしたけど、ジーンとくるものがありました。
ゆりを家族として迎え、母親としての代わりを務めようとし、お風呂上がりにベランダで後ろから抱きしめるシーンは、完全に心をえぐられてしまいました。
泣けるとかじゃなくて切ない余韻が残ってしまう、そんなシーンでした。
冒頭での彼女はかなり無愛想な人間という印象でしたけど、物語の進展とともに成長していき、それもまた心をえぐられた原因のひとつだったのかもしれません。
祥太くんとゲップでゲラゲラ笑う光景とかは、これこそ日常のなかに幸せが感じられるシーンでほっこりしました。
ぼくも子どもとは、どうでもいいことで笑って、どうでもいいことで怒って、どうでもいいことで泣いて、そんな時間を一緒に共有していけたらなあと心が温まりました。
人の心を動かすことでいえば、安藤サクラという女優さんは天才なんだと思います。
最も○ ○で賞
出演者のなかから、個人的に目に留まった人物を勝手にピックアップしてかっこいいで賞&美しいで賞という名目で表彰しています。表彰の基準は様々で、見た目だけでなく役柄も重要視した上での判断となります。
最もかっこいいで賞
「学校は勉強ができないやつが行くところ」というセリフが印象的で、「スイミー」愛読家でもある人物の城桧吏演じる柴田祥太を選びました。
理由は犯罪家族のなかでも希望となる存在だったのもありますが、なによりも純粋に男前の顔をしていたからです。
この男前のレベルは、将来が約束されているといっても過言ではありません。いやー、ご両親はこの先が楽しみでしょうね。あまり期待をかけてしまうと方向性を誤ってグレてしまうかもしれませんが。
作中ではパパとは言えない治と一緒に万引きをする、やることは悪ガキ的な存在でした。
ゆりと一緒に万引きをするシーンとかは、複雑な心境を抱かずにはいられませんでした。この子らに果たして、希望はあるのだろうか。そして、将来はあるのだろうか。
祥太くんにとってゆりは、自分の行動を見つめ直す存在だったのかもしれません。
子どもでありながらもその心の成長を描く演技力の高さは、天才子役師と呼ばれていた柳楽優弥の到来なのではないかと思います。
彼の俳優としての姿と重なる点は多くあり、今後の活躍が期待できます。
最も美しいで賞
今は亡き……。2018年9月15日に亡くなった樹木希林演じる柴田初枝を選びました。
映画にしてもドラマにしても、樹木希林さんの作品はこれといって観たことがあるかどうかわからない程度の記憶で。(邦画自体、好んで観るようになったのもここ最近ではありますし)
そういえば、『海街diary』で菊池史代役で出演していたのを思い出しました。
この頃の年齢になると演技も熟練されていて、いい意味で上手いんだかどうなんだかよくわからないというのが正直な感想です。
見た目はおばさんですし。えっ、それって演じているの?そのままじゃんと思ってしまうところもありますが、この自然な振る舞いに感じられること自体がすごいことなんじゃないかと思います。
表現が正しいかわかりませんが、熟練した女優にしかたどり着けない境地でもいいましょうか。
すべてにおいて美しい佇まいが、そこにはありました。
今更ではありますが、樹木希林という人間性にハマりつつあります。
さいごに
本作は観ないと損というよりも観なきゃでしょー、と思うような作品でした。
いろんな賞を受賞していますし、海外でも日本でも反響が高い理由というのが本作を観ればわかると思います。ぼくは納得の作品かなと思いました。
記事では安藤サクラをえこひいきして評価していますが、正直にいえば出演者みんなすごいです。
[voice icon=”http://yoikagen.com/wp-content/uploads/2016/09/IMG_2634.png” name=”バンコ” type=”l”]本当に心を動かされてしまったときに出る言葉って、すごいという言葉以外でないんだなと思いました。[/voice]